この記事はこんな人におすすめ

ルースパーツ遊びを取り入れるために、部屋を整えたい
遊びを促す環境づくりについて知りたい

こんにちは、おったです。既製品のおもちゃも大切だけど、自然や雑然とした世界との触れ合いも大切にしたい。そんな思いから調べていると、「ルースパーツ」と呼ばれるもの、そして遊びの世界に出会いました。あまり日本語の情報が多くないようだったので、このブログで解説記事にまとめています。 [related:looseparts] この記事では「環境づくり」に焦点を当て、**集めたルースパーツをどのように配置すれば遊びの可能性を引き出せるのか**について解説していきますね。子どもが遊びの世界に没入し、想像力を最大限に発揮するためには、ある程度の制約が必要です。ルールがあるから自由に遊べると言っても過言ではありません。そして親にできることはそのルールづくり、言い換えれば遊ぶための環境を作ってあげるだけで十分なのです。

おった

一緒に整えていきましょう！

## ルースパーツを集める際のポイント ![さまざまなルースパーツ](/post-imgs/materials/looseparts-variation.webp) 安全性への配慮についてはルースパーツの種類についての記事で解説しました。

安全性のチェックポイント

誤飲しないサイズか
年齢・遊び方に合わせたアイテムになっているか
有害物質ではないか
衛生を保てるか
耐久性に問題がないか

[related:looseparts] 今回はそれをクリアしているものとして、その先の選び方について取り上げていきますね。

ルースパーツを集める上でのポイント

遊びながら変形させたり運んだりできるような、自由度の高いアイテムを取り入れる
子どもがデザインしたり、組み立てたり、小道具にできるような面白い素材を取り入れる
量は多すぎると刺激が強く、少なすぎると争いを生むので、監督者がちょうどいい塩梅を見つける
アイテムは奇数で用意する
さまざまな質感のアイテムを用意する

このなかで疑問に思うところがあるとすれば、4つ目の**「アイテムは奇数で用意する」**という点ではないでしょうか。書籍 Loose Parts 2: Inspiring Play with Infants and Toddler では、**「3または5つの容器のグループは、2または4つの容器のグループより視覚的に強かった」** という実験結果が紹介されていました。ここからはわたしの予想でしかないのですが、2択より3択がいいのは組み合わせの選択肢が生まれるからだと思います。心理学には**「マジカルナンバー」**という考え方があります。これは人間が短期記憶に置いておける情報の数を指しており、かつては7±2個と考えられていましたが、2000年代になってからは4±1個と考えられるようになっているそうです。つまり、**人間が瞬時に記憶できる情報の限界は3〜5個**。そのため、選択肢もそのなかに収めてあげた方が子どもの脳に負担がかかりません。

おった

少し調べてみましたが、4個より3または5個の選択肢が「視覚的に強くなる」理由はわかりませんでした。

もしわかったら追記しますね。ルースパーツを集めるときのポイントについては、もうひとつ覚えておいていただきたいことがあります。

ルースパーツ遊びにのりやテープは必要ありません！

これ、かなり意外じゃないですか？ **ルースパーツは、何ものにもなれる**ことが条件のひとつです。積み木を作品にするために接着剤でくっつけないように、ルースパーツも接着した時点でルースパーツではなくなってしまいます。 **工作とルースパーツ遊びは異なる遊び**なのです。ルースパーツ遊びを純粋に楽しんでもらいたい時には、接着剤の類は子どもの目の届かないところにしまっておくようにしてください。

おった

とはいえ、家庭で遊ぶ分には工作との棲み分けについて、あまり重く考える必要はないんじゃないかなと個人的には思っています。わが家もルースパーツと工作ゾーンは近いですし、厳密には区分していません。

## ルースパーツを提供する場の工夫ルースパーツ遊びの環境づくりは、3つの段階で進めることが大切です。

ルースパーツ遊びの環境を整えるための３つの視点

どのような場所で遊ぶか
どうやって陳列するか
どのような作業スペースを設定するか

子どもの遊び方は、大人がどのような環境を提供するかによって変わります。だから環境づくりは大人に託されたとても大切な仕事なのです。 ### どのような場所で遊ぶか

室内で遊ぶか、屋外で遊ぶか

タイヤや丸太のような大きなルースパーツを使って全身を動かすような遊び方は、外でしかできません。また、砂や泥、水を使った遊びも外ならではの遊び方です。家のなかでやれるのは色水遊びぐらいで、こちらはルースパーツ遊びとは異なります。一方室内では、子どもの遊びは比較的おとなしいものになります。平面に何かをデザインするときには、風雨の影響を受けない室内の方が楽しく取り組めるでしょう。陳列棚を設置しやすいので、**より多くのルースパーツを使った活動が可能**になるのも室内です。

卓上で遊ぶか、床・地べたで遊ぶか

テーブルの上で遊ぶのか、床や地べたで遊ぶのかによっても子どもたちの遊びは変わっていきます。

おった

詳しくは作業スペースのところで述べますね。

### どうやって陳列するかルースパーツ遊びで見逃されがちなのが、この陳列方法に関する点だと思います。拾ってきた素材を、適当な箱や袋に入れていませんか？次のイラストは、室内・卓上でルースパーツ遊びをすると仮定して、理想的な環境を描いたものです。 ![ルースパーツ遊びの理想的な環境](/post-imgs/looseparts/looseparts-environment.webp "ルースパーツは陳列棚に整然と並べ、作業台との間には距離をとることがポイント") 子どもの自由な遊びを促すために、ルースパーツは秩序正しく陳列されることが望ましいのです。陳列棚の並べ方には、5つのポイントがあります。

陳列棚の並べ方で気にしたいポイント

すべてのアイテムは子どもの手の届く範囲に置く
一覧性を確保する（背の低いものは背の高いものの前に並べ、すべてのアイテムが見えるようにする）
色・形・質感・パターン・デザインによってルースパーツを整理する
カゴや容器を使って整理し、秩序正しく並べる
光・色・透明度の組み合わせで幼児の興味を惹く

最初の2点については、**モンテッソーリ教育の教具棚の考え方に似ている**ことに気が付かれた方もいらっしゃるかもしれません。 3つ目からは少し補足説明が必要でしょう。 **色・形・質感・パターン・デザインによって整理**するのは、**「分類」の概念を子どもに身につけさせるチャンス**でもあります。そのため、初めは子どもと一緒に実践してみても良いですよね。ですが、何度も同じことをさせる必要はありません。子どもの遊びは発展していくので、新しい遊びに没頭できる時間を作ってあげた方が効果的です。ここでは2回目以降、大人が分類して整理するという前提で陳列棚のポイントを解説します。色・形・質感・パターン・デザインによって整理する、カゴや容器を使って秩序正しく並べるという2つのポイントを押さえて陳列棚を作るとどんなものになるかを考えてみました。 ![陳列のポイント](/post-imgs/looseparts/display-points.webp "陳列で気をつけたいポイント") ご自宅で実践する場合にはスペースの問題もあるでしょうし、必ずしもこの通りにする必要はないのですが、ルースパーツ遊びのイメージ作りをお手伝いできれば嬉しいです。光・色・透明度の組み合わせで幼児の興味を惹くという点については、次の作業スペースの項目で解説しますね。 ### どのような作業スペースを設定するか作業スペースのポイントは、**「場を制限すること」**に尽きます。作業台を使う場合には、その作業台の大きさや素材によって子どもの遊び方が変わります。例えばガラス天板のテーブルなら、子どもは下から覗き込んで遊べますよね。でも割れないように注意が必要です。何を優先するかを考えてみましょう。床で遊ぶ場合には、ラグやマットなどを敷いてその上で遊ぶようにします。空間を仕切って、そのなかでなら自由に遊んでいいと決めてしまった方が、子どもも大人も楽です。また、ルースパーツを置いている場所と作業スペースの間はあまり近くなりすぎないように気をつけます。

おった

移動もルースパーツ遊びの一部だからですね。

また、作業スペースでは「背景」まで意識したいところです。そこで使えるアイテムが、**鏡・ガラス（あるいは透明の板）・ライト・布**など。 ![作業台で使うと便利な背景](/post-imgs/looseparts/workspace-points.webp "作業台で使うと便利な背景") 木製のテーブルだと下から覗き込むような遊び方はできませんが、アイテムを使うことで遊びを広げていくことができます。例えば鏡を机の上に敷いてみる。あるいは立てて置いてみる。角度を変えればアイテムの数も変わるので、子どもは夢中で鏡を覗き込みます。万華鏡のようなイメージです。ちなみに、敷いた状態だとこのように不思議な世界観を楽しむことができます。 ![鏡で映して遊ぶ](/post-imgs/looseparts/looseparts-mirror.webp "大きめ、かつ割れにくい鏡があると遊びが一気に広がります") この写真で使っているグリムス社のアーチレインボーは半円形の積み木なので、それを鏡の上に並べると円形に見えます。ただ鏡の上に並べただけ、置いただけで浮遊感のある作品ができるので、大人も子どもも夢中になれますよ。 **鏡は割れる心配のいらないアクリル製**がオススメです。わが家が使っているのは、積み木で有名な童具館の「ビッグわくわくミラー」。 [product:bigwakuwakumirror] アクリルミラーなので割れる心配がほとんどいらない上、2つ折りにできるので立てることも容易です。ミラーは36cm四方のものが2枚ついているので、広げて使えば作業スペースとしても十分な広さが確保できますよ。

おった

モンテッソーリ教育でも、0歳児から鏡を見せることがオススメされています。鏡の知育効果はあなどれません！

また、光を使った作業スペース作りも幻想的な世界観を演出してくれます。例えば、絵を描くときに使うライトテーブルというトレース台を使えば、下から広い範囲で光を灯すことができます。わが家は娘が0歳のときランタンもライトテーブルも持っていなかったので、絵本ライトを使って遊びました。 ![絵本ライトで遊ぶ](/post-imgs/looseparts/looseparts-lighting.webp "絵本ライトの光が積み木の隙間からこぼれてくる様子に興味津々の娘（0歳）") 写真は、積み木を隙間ができるように並べて絵本ライトで中から照らした様子です。こぼれてくる光に興味津々で、じっと眺めていました。半透明のルースパーツなどを組み合わせれば、さらに幻想的な空間を演出できるでしょうね。最後に、布の利用について。布にはさまざまな種類がありますね。フェルト、タオル地、シルク、ベルベットなど…… 子どもはその素材感の違いを楽しむのですが、布は舞台背景としてもとても優秀です。

おった

広げるだけで目の前に広がる景色を一変させてくれるところが魅力ですね。

色遊びを楽しむのにぜひ取り入れたいところです。100均でさまざまな布が手に入るので、探しに行ってみてください。ただし、シルクは高級品なので100均では手に入りません。それでも柔らかで滑らかな触感のシルクはぜひルースパーツとして取り入れて欲しいもの。サラズシルクという会社が、遊び用のプレイシルクを販売しています。 [product:sarahssilk] 購入するなら、Lサイズ以上がおすすめです。このプレイシルクはシュタイナー教育に影響を受けており、**自然をイメージした染色**が特徴的です。そのため、外で拾ってきた自然由来のルースパーツとも違和感なく遊べると思いますよ。 ## まとめこの記事では、ルースパーツで遊ぶための環境づくりについて解説しました。遊んでいる例は積み木だったりで、ルースパーツって……？と改めて思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。ルースパーツについてはこちらで解説しているので、ぜひご覧ください。 [related:looseparts] これらを家庭で取り入れると考えたとき、やっぱりおもちゃ棚に廃材を並べることには抵抗があったので、わが家は既製品で代用できるものは既製品で代用しています。できるだけ形状の抽象性を大切に、探索できる環境を用意すればいいのかなと思っています。こうしなきゃいけない！と重く考えずに、できることから取り入れてみてくださいね。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

参考文献

Beloglovsky, Miriam, Lisa Daly, and Janet Gonzalez-Mena. Loose Parts 2: Inspiring Play with Infants and Toddlers. Illustrated edition. Redleaf Press, 2016.